第一章 絶望と異世界と狼男と少女

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 起き上がった私は、そのまま朝食を摂ることにした。  シンクの下に備え付けられた収納棚にいれていた、一袋五個入りの小ぶりなバターロールを一つ袋から取りだし、そのままかぶりつく。  バターロールというのは基本、ハムやチーズ等を挟んで食べるものというのは重々承知してるが、今日はそんな気分が起きなかった。それよりもまず、ハムやチーズは切らしている。  二個目のバターロールも腹の中にいれ、コップに汲んだ水を流し込めば、少しは胃がくちくなった。この部屋に入居したのが三月の上旬の頃で、今世間はゴールデンウィークにやるべき行楽について紹介していたから、もう既にこんな生活を二ヶ月程行っている事になる。  この間に体重は十キロ程落ちた。外に出るのは買い出しと銭湯に行く時くらいで、バイトはしていない。口座の残金は増えることなく着々と減っていき、いつかは尽きる事になる。  金が尽きればどうなるのか? 食べるものも無く、電気代や水道代も払えなくなるので、ライフラインが止められる。そのまま部屋の真ん中で力尽き、大家の通報で死体となって発見されるのだろうか?      
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