ある夜の物語

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「だって、忙しい春さんが、早く帰って来てくれただけでも嬉しいのに、ちょっと強引な感じがするし。こうやってふたりきりになれたし」 「……」 普段どれだけ鈴音に寂しい思いをさせているのかと、春一は反省する。 こんな些細なことを、こんなに嬉しそうに語ってくれる鈴音がとても可愛い。 愛しくてたまらない感情がわいてくる。 「……鈴音」 「だから、春さんとの距離が近すぎて、さっきからものすごくドキドキしているんです」 春一の声が聞こえなかったのか、鈴音は無邪気に続ける。 「心臓の音が春さんに聞こえたらと思ったら、なんだかすごく、恥ずかしくなってきちゃって……」
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