ある夜の物語

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「……鈴音」 いつだって鈴音と春一の邪魔をしてくる、あの目ざとい弟たちは、もう各自の部屋に引っ込んだだろうか。 春一は、今度はそっと手を伸ばして、赤く染まった鈴音の頬に指先を滑らせる。 ピクンと反応してこっちをみあげた鈴音が、とても可愛かった。 「そんなに、恥ずかしがらなくていいよ」 そのまま進むと自分が暴走しそうなので、腕をひいて、自分の胸をひとつ叩く。 「俺もヤバいくらいドキドキしてるから」 実際に、 ――ゴン―― と胸を叩いた音より、自分の心臓の音の方がうるさいくらいだ。
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