ある夜の物語

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「アタタタタ、そーっとやれよ、そーっと!」 秋哉は鈴音に、膝小僧の傷の手当てをしてもらいながら悲鳴じみた声をあげる。 「あ、ごめん秋哉くん、しみた?」 「しみた? ってしみたから叫んでるんだろーがよ。相変わらず抜けたこと言ってんじゃねーよスズネ」 「だからごめんって。謝ってるじゃない」 鈴音は律儀に秋哉に謝りながら、消毒薬で濡れた傷口を、唇をすぼめながらフーフーと吹いてやる。 『別にそこまでする必要はないだろう』 春一は気に食わないが、こんなことで怒鳴るのもなんだしなという気分で、無理やり首をねじ曲げて視線を剥がしていると、 「ねぇ鈴ちゃん。僕ジンジャーティが飲みたいんだ。ちょっと風邪ひいたみたいで寒気がするの」 冬依が少し大げさなぐらい体を震わせながら言う。 鈴音は慌てて、 「ヤダ冬依くん大丈夫? 熱は計ってみた?」 冬依を心配する。 冬依は風邪をひくとすぐに高熱を出すからだが、今回のはちょっと大げさだ。 『なんで鈴音には、そういうのがわからないんだろう』 春一は鈴音の単純さに呆れて小さなため息をつく。
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