幸運の四つ葉のクローバー

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涙をぬぐって、頬に泥を塗って、そっと四つ葉のクローバーを摘むと、それを握り締めて立ち上がった。今度は君の家に向かって走り出す。 たまたま飼い犬と庭で遊んでいたところに飛び込み、四つ葉のクローバーを君の手に握らせた。足にまとわりつく小さな犬が邪魔してくるけど、今はかまえない。 「……ごめんっ、ね」 お詫びのしるしのプレゼント。 こんなものがないと、素直に謝る事ができなかったんだ。子どものくせにちゃちなプライドだけは一丁前で。 ごめんの一言しか言葉にできないのに、四つ葉のクローバーは一瞬にして君を笑顔にし、僕らの仲を取り持ってくれた。 それから僕らは大人になるまで長い付き合いになるけど、些細な事ですれ違ってはその隙間を埋めて繋いでくれたのが、四つ葉のクローバーだった。 仲直りのしるしだったり、励ましのエールだったり。時には君から僕に贈られる事もあった。 探してみると、見つからないもんだよね……と、ちょっとばつが悪そうに目をそらし四つ葉を差し出す君が、それから小さな声でごめんねと言うと、僕の心の中でモヤモヤしていたものが綺麗に吹き飛ばされるのだった。
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