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目覚めるとそこは屋外階段の踊場だった。
きっと彼の物語の出だしはこうなるだろう。
何が悲しいのか、独りぶちぶちと愚痴り、安酒に呑まれて泣き喚いた挙げ句、騒音に耐えきれなかったチンピラに掌底を叩き込まれた青年の話の始まりは。
あの膝を抱えた少女の出だしはそうなった原因への問い掛けだろうか。
明け方の空を睨む世の中のはみ出し者の彼は世間への不満だろうか。
屋外階段の踊場なんていいもんじゃない。不幸とまではいかずとも、幸せなんて欠片も感じていない人間が集まる場所だ。
そんな何かしら抱え込んだ人々の物語を想像しながら、時には名も無きエキストラとして出演してみたりして観察する。
想像通りのものもあれば、その上を行く壮大なものであったり、遥か斜め上をいく変わり種であったり、物語と呼べるほど大したものでなかったり。
10分の1の確率で出会う幸運な物語であったり。
不幸せが集まる小さな場所の短編集。
一つ一つは別物語であっても、案外どこかしらで繋がっていたりする。
それを創るのが自分の趣味であり生き甲斐である。
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