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「そうか。それではかなり離れているな……やむをえん。六、ここは俺達だけでなんとかするぞ」
「へい! がってんだ。でも、格さん、ご隠居もいないのにどうするつもりです?」
光圀達が連絡の取れるような距離にいないことを悟った格之進は、主人になり代わって悪を正すことを決意すると、六兵衛にもその旨を伝える。
「あ、あのう、あなたさま方はいったい……?」
そんな二人のやりとりに、ただの旅人ではない空気を感じとった父親は、怪訝な顔でおそるおそる二人を交互に見比べながら尋ねる。
「じつは我らの主人はさる身分のあるお方でしてな。ま、多少、偏屈者ではあるのですが、こういった身分をかさに悪事を行う輩が大嫌いなのです。無論、我らもその家臣として、このまま見過ごすわけにはまいらん。その悪い代官と取り巻きの悪党ども、この格之進と六九兵衛が懲らしめてしんぜよう」
「はあ……」
光圀の名は伏せながらも正直に答える格之進であるが、突然、自分達の力ではどうにもならないと思っていた代官をなんとかしてくれると言われてみても、親子は信じられずに二人してポカン顔である。
「そうだな……その、掘った硫黄というのはやはり村内で火薬にしておるのですかな? ならば、できた火薬というのはどこに隠してあるのです?」
そうして目をパチクリさせている親子に、格之進は腕組みをすると難しい顔で尋ねた。
「……へ? へえ。硫黄は村で尿から作ってる硝石と混ぜて火薬にした後、外には洩れねえように代官所の蔵にしまっておりやすが……」
訊かれて我に返った父親は、信じられないながらも有体に火薬製造の秘密について答える。
「そうか……よし。ご隠居もおらんことだし、まずはそいつを盗み出し、悪事の証拠として関東郡代に届け出よう」
「そうっすねえ……二人だけってのはちょっと心もとないですが、まあ、ちょっくら拝借してくるだけならなんとかなりそうっすね」
話を聞き、具体的な作戦を立てる格之進に、六兵衛も少々不安な面持ちながら、その企てに賛同の意を示す。
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