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「ちょ、ちょっと待ってくだせえ! 代官所に乗り込むって、お二人だけでですか!? あそこの蔵は代官所の役人ばかりか湯煙一家の連中まで警護についておりやす。そんな所にお二人だけでなんて……」
「そうですだ! どんなにお二人がお強かろうと、とてもじゃねえが危なすぎますだ!」
一方、彼らが何者であるかを知らない親子二人は、その普通聞いたら無謀すぎる企てに驚きの声をあげて必死に止めようとする。
「なあに、だいじょぶっすよ。この格さんがいれば千人力。たとえ鬼が来ようが何千何万の鎧武者が来ようが、赤子の手を捻るようにちゃちゃ~っと、叩きのめしてくれまさあ」
だが、真顔で心配する父娘を他所に、六兵衛はまるで真剣みのない笑顔を浮かべると、あたかも自分のことであるかのように胸を張ってそう嘯く。
「………………」
そんな六兵衛を、格之進は「おまえが言うな」というような渋い顔をして、冷めた細い目で黙って見つめていた――。
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