341人が本棚に入れています
本棚に追加
じゃあどうして。
そう言う前に佳波さんが言った。
「亜夜は大人になって、いつまでも子供じゃない。そんなこと当たり前なのに、私は分かってなかった」
いつもみたいにはきはきした喋り方じゃない。
考えながら、迷いながら喋ってるみたい。
視線も定まってない。
「さっき、温泉で亜夜を見たとき、焦った。もう大人なんだな、って」
見られてたの……!?
びっくりしたし恥ずかしいけど今はそこじゃない。
「亜夜が大人になるってことは、私も歳をとるってことじゃない?」
「そうですね」
私が今25歳で、佳波さんは37歳、だったかな?
初めて会った日から7、8年。
そりゃ歳もとるし、大人にもなる。
「亜夜が大人になって、世間を知って、いろんな人に出会って、私よりも好きな人ができたらどうしようって」
「何言ってるんですか。そんなことあり得ませんよ」
思わず口をついた。だけど佳波さんの表情はまだ不安なまま。
最初のコメントを投稿しよう!