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佳波さんがぽかんとしている。
悔しい。そう思われてたことが。
佳波さんは私の気持ちがその程度だと思ってたのかな。
そんなことで佳波さんから離れると……?
私はいつかくる未来のために今を諦めたくない。
自分が楽な方に逃げたくない。
いつかくる未来に怯えて今を手放さない。
前言撤回。
佳波さんだって私のこと何も分かってない。
「佳波さんのばか」
小さくそう言って私は部屋を飛び出した。
そのまま旅館の外へ出る。
夏特有のねっとりのした、だけど澄んだ空気が肌にまとわりつく。
すぐにじわりと汗が出てきた。
もう7月だしな……。
空には星が光っている。
「はぁ……」
思わずため息がもれた。
あーあ、「ばか」なんて言ってしまった。
初めて佳波さんにそんなこと言った。
今まで喧嘩もしたことなかったのに。
なんでよりにもよって温泉に来たときに……。
またため息が落ちる。
私が悪いのかな……いや、私は悪くない!
そう思っても心がもやもやする。
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