温泉旅行

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その時、浴衣の袂に入れていた携帯が鳴った。 びっくりして画面を見るとそこには佳波さんの名前。 「……はい」 少しの間考えて私は電話に出た。 だけど向こう側から返事はない。 しばらくの間無言が続いた。沈黙を破ったのは佳波さんだった。 『……ごめん』 小さな声。自信なさげに。 「……何に対してですか?」 『何も分からないことに』 謝って欲しいわけじゃない。きっとそれは佳波さんも分かってる。 『私は亜夜のことをなんでも知ってると思う。多分、今私がどうしたらいいかも分かる。でも自信がない。正解を見つけてもそれが正解か分からなくなる』 何が正解か分からなくなる? そんなの、どうでもいい。 「正解じゃなくてもいいじゃないですか。間違ったって私は佳波さんから離れていきません」 『でも、』 「それなら!」 佳波さんの言葉が終わらないうちに私は遮った。 「佳波さんは私から離れますか?」 『え……?』
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