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「佳波さん、」
なかなか何も言わないから、私から。
「月が綺麗ですね」
向こうで息を呑む気配がした。
伝わった、よね。なんて返ってくるかな……。
『……死んでもいいわ』
「ふふ、」
思わず笑ってしまった。まさかそう返ってくるとは。
「それは嬉しいですね」
笑いながらそういうけど電話の向こうからは笑う声は聞こえない。
『……私は、不安とか言えなくて、なんでもないふりばかりしてるけど、でもこれからは一人で抱え込まないようにするから』
小さな弱気な声で。いつもの佳波さんとは全然違う。
「だから、一緒にいてくれる?」
私は携帯を耳から離して振り向いた。
「……ええ、もちろんです」
そこには佳波さんの姿が。空いた距離を私からつめる。
「おなか、空きましたね」
「うん」
二人で目を合わせて笑う。いつも通り。
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