温泉旅行

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「それにしても」 手を繋いで旅館へと歩きながら話す。 「知ってたんですね」 「何が?」 佳波さんが不思議そうに私の顔を見る。 「『死んでもいいわ』って」 まさか佳波さんが知ってるとは思わなかった。 「前に亜夜が言ってたでしょ?」 「あれ?そうでしたっけ?」 記憶を探ってみるけど覚えがない。 「『片恋』を読みながら」 ……ああ、あの時か。 ーー佳波さん、月が綺麗ですねって言われた時の返し方知ってますか? ーー返し方なんてあるの? ーーはい、死んでもいいわって言うんです。 ーーへぇ、どんな意味なの? ーーそれは内緒です。 もう半年くらい前だったような気がするのに。 覚えてたんだ。そんな何気ない会話を覚えていてくれたことが嬉しくて。 「あれから意味調べたんだよ」 「じゃあ意味を分かって言ってくれたんですね」 すごく嬉しくて思わず笑みがこぼれた。
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