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「佳波さん」
「ん?」
歩きながら佳波さんが私を見る。
そんな何気ない表情が大好きで。
「いっぱい喧嘩しましょうね」
そう言ったら佳波さんは可笑しそうに笑った。
「なにそれ」
「喧嘩しても仲直りしたらもっと仲良くなる気がしません?っていうか、絶対そうですよ!」
力いっぱいそう言った私を佳波さんは呆れたように見たけど。
「そうだね。……亜夜も言ってくれる?」
「え?」
何を言うんだろう。別に何でも言えるけど。
分からなくて佳波さんを見ると佳波さんは言った。
「月が綺麗だね」
その目は全く月など見てなくて。
真っ直ぐ私に向いている。
そんなこと言わなくても言うのに。
遠回しじゃなくてはっきりと。
でも今は、
「私、死んでもいいです」
ぎゅっと強く握られた手を私も握り返して。
「アイス食べたいです」
そんなどうでもいいことを言って熱くなった頬を隠した。
ーー私はあなたのものです。
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