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「ね、亜夜も口の方がいいでしょ?」
「そ、んなこと、言われたって……」
恥ずかしくて声がだんだん小さくなる。
目も合わせられない。
抱きしめられたまま視線を落とすと、背中に回っていた佳波さんの腕が離れた。
「ぁ……」
それがなんだか寂しくて。
思わず佳波さんを見た。
「ん?」
佳波さんはその手を私の頬にそえた。
「なに?抱きしめて欲しい?」
「……いいえ、ただ触れていて欲しいだけです」
自分の頬にある手に手を重ねる。
長くて綺麗な指。
あたたかい手。
私の大好きな手。
佳波さんの指が私の唇をなぞる。
「亜夜」
「なんですか?」
なんて平気なふりをしてみても、心臓はばくばくいっている。
聞かなくても分かる。
佳波さんの言いたいこと。
でも、だって、そんなこと恥ずかしくて……!
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