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外に出ると秋の訪れを告げる少し冷たい風が頬をかすめた。
「ああ、夏も終わり、か……」
夏は好きじゃないけど、終わったら少しさみしい。
なんだか置いていかれた気がして。
今年の夏はこれをしようって決めてたはずなのに、何もできないまま、夏は終わる。
自分だけ変わらないままなような気がして。
ただなんとなく空を見上げていると、左手をとられた。
「何してるの、行こ」
佳波さんの体温が伝わってくる。
「置いていかないよ。亜夜が置いていかれそうになったら私が連れて行くから。大丈夫」
前を向いたままの佳波さん。
なんで、私の考えてること分かるの……?
「……亜夜が言ったんだよ。一昨日、夜中に急に泣き出して。覚えてない?」
泣き出した?私が?
たしかに昨日の朝起きたら少し目が痛かったような気がしたけど。
全く覚えてない。
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