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ブブ、と震える音がして目が覚めた。
携帯の光が目を指す。
『ごめん、もう少し帰れそうにない……今日は無理かも。ほんとにごめん』
時間は9時過ぎ。
真っ暗な部屋。
気持ちも真っ暗。
返信しないと。大丈夫ですよ、って。気にしないでお仕事頑張ってください、って。
なのに、画面がぼやける。
今日は早く帰れるって言ってたじゃん。
だからずっと待ってたのに。
ずっと楽しみだったのに。
ぐっと唇を噛んで、涙が流れる前に拭った。
『そうですか』
それだけ送った。
分かってる。佳波さんも早く帰る気だったんだって。
楽しみにしてたんだって。
佳波さんは悪くない。
仕方ないもん。お仕事だから。
仕方がないもん……。
また涙がじわっとにじんで、今度は流れた。
真っ暗な中、ソファから立って、寝室へ。
服がシワになるのも気にせずベッドに入った。
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