約束

3/9
前へ
/359ページ
次へ
ブブ、と震える音がして目が覚めた。 携帯の光が目を指す。 『ごめん、もう少し帰れそうにない……今日は無理かも。ほんとにごめん』 時間は9時過ぎ。 真っ暗な部屋。 気持ちも真っ暗。 返信しないと。大丈夫ですよ、って。気にしないでお仕事頑張ってください、って。 なのに、画面がぼやける。 今日は早く帰れるって言ってたじゃん。 だからずっと待ってたのに。 ずっと楽しみだったのに。 ぐっと唇を噛んで、涙が流れる前に拭った。 『そうですか』 それだけ送った。 分かってる。佳波さんも早く帰る気だったんだって。 楽しみにしてたんだって。 佳波さんは悪くない。 仕方ないもん。お仕事だから。 仕方がないもん……。 また涙がじわっとにじんで、今度は流れた。 真っ暗な中、ソファから立って、寝室へ。 服がシワになるのも気にせずベッドに入った。
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

341人が本棚に入れています
本棚に追加