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目を閉じても意識ははっきりとしたままで、目からは涙が溢れてくる。
なんで、なんで今日なの。
なんで今日に限っていつもよりも遅い時間になるの?
だって佳波さん約束したのに。
楽しみにしてたのは私だけなの?
佳波さんは行かなくても平気なの?
枕がどんどん濡れていく。
佳波さんは悪くない。
だって仕事だもん。仕方がないもん。
何度も自分に言い聞かせる。それでも涙は止まらない。
「……っく」
嗚咽が漏れ、ぐっと唇を噛み締めて枕に顔を埋める。
どのくらいそうしていただろう。
枕は涙ですっかり冷たくなってしまった。
玄関のドアが開き、佳波さんの足音が聞こえた。
「亜夜……?」
真っ暗なリビングに佳波さんの戸惑う声が聞こえる。
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