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少しして寝室のドアが開いた。
隙間から廊下の光が漏れる。
佳波さんがベッドに腰掛ける。キシ、と音を立てた。
「亜夜、ごめんね……」
私の頭を撫でながら佳波さんが言う。
だけど私は声を出すこともできず、顔を上げることすらもできなかった。
だって、今何か言ったらきっと泣いてしまう。
佳波さんの顔を見たらきっと責めてしまう。
佳波さんは悪くないのに。
だからただ枕に顔を押し付け、唇を噛んで涙を堪えることしか出来なかった。
「亜夜……?」
何も言わない私に佳波さんが声をかける。
ごめんなさい。もう気にしないで。今は放っておいて。
佳波さんを責めたくない。
涙を見せたくない。
だから、今は1人にしてください。
それすら言えず、唇を噛んだ。
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