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しばらくして佳波さんが寝室から出て行った。
その瞬間、堪えていた涙が溢れた。
なんで、なんで涙が出るの?
一人にして欲しかったのに。
なのに、そばにいて欲しかった。
佳波さん……!
寂しいよ。寂しくて仕方がないよ。
辛くて、苦しくて、そばにいて欲しいよ。
でもね、涙を見られたくない。
佳波さんを傷付けたくない。
今は一人にして欲しい。
分からない。自分が何を望んでるのか。
そばにいて欲しいのか、離れてて欲しいのか。
ぐるぐる頭をまわる矛盾。
涙が絶え間なく溢れて、だけど声が漏れないようにぐっと唇を噛んで。
キッチンの方から音がする。
佳波さんが晩ご飯を作ってるんだろう。
行かなきゃ。
仕方がないので許してあげます。次は約束やぶらないでくださいね、って。
いつもみたいになんでもないように笑って。
そしたらきっと佳波さんも笑ってくれる。
ごめんね、次は約束守るから、って。
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