21人が本棚に入れています
本棚に追加
「あら、今日はプロポーズないんですか?」
よう子の軽口に、松尾氏は重々しく頷いた。
「言いすぎは逆効果だと気づいた」
「今頃ですか」
松尾氏はそれには答えず、フフンと笑って聞いてきた。
「ところで今日は何日?」
「12月22日ですよ、クリスマスまであと少し」
「ありゃ、ちょっと早かったか、まあいいや。その辺にスケッチブックあるんだけど、取ってくれないか」
乱暴に転がされているのを、よう子は松尾氏に手渡した。
松尾氏は、長い指で小さなスケッチブックの表面を愛おしそうに撫でた。
そのくせ、ほいっと投げるようによう子に押しつけた。
最初のコメントを投稿しよう!