第1章

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事業に失敗して多額の借金を背負った私を残し、妻は子供達を連れて家を出て行った。 私が死んで保険金が下りれば、少しは家族に金を残すことが出来るだろう。 だが私が加入している生命保険は自殺した場合は下りない。 だから事故に見せかけた自殺を試みた。 湯船一杯に湯を張り酒を飲んで湯に浸かる。 これで溺死すれば事故だと思うだろう。 翌朝凍えるような寒さで目を覚ます。 湯が冷め、冷たい水に浸かっていた私は自殺の失敗を悟る。 冷たい水から凍え強張った身体を起こし湯船から出ようとしたその時、湯船の縁に強張った足が引っかかり、脱衣所と風呂場を隔てるガラス戸に頭から突っ込む。 割れたガラスで頸動脈を切った私は血が迸る傷口を押さえ、これなら自殺を疑われる事なく事故だと判断されるだろうという思いが頭に浮かぶ。 家族に金を残せる目処がつき、男は顔に笑みを浮かべて事切れた。
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