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広太は手の平の上に拳を置いて、閃いたような仕草をする。
「生徒でもセンの場所を知る事ができたのか」
そうなる。 しかしこの推理はほとんど意味がないだろう。 実は俺が入学の祝辞を述べられている暇な間に考えていたが、思い当たる人物がたった一人だけいた。
「ここが多目的室か」
到着した多目的室は普通の教室となんら大きさは変わらなかった。
「この勧誘事件の犯人だが、俺は心当たりがある」
扉の引き手に手をかけ、
「その人物は俺がこの高校に入学することを知っていて、尚且つ俺が推理好きだと知っている人物」
扉の向こうの景色が開けてくる。 俺はとある先輩と推理小説について熱く語った事がある。
「では、どうしてその人物は俺についてそんなに詳しいのか? その理由は一つ」
完全に扉を開けると、差出人と思われる人間が行儀悪く教卓の上に座り足を組んでいた。
「ーー中学の先輩だからだよ。 そうですよね? メイ先輩」
俺と広太が通っていた中学の先輩。 メイ先輩は推理小説が好きで、同じく推理小説好きな俺とよく話をした。 話す機会があったのはお互いに図書委員だったからだ。
「やっぱり来てくれた!」
本郷メイ。
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