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「ここの高校は、本の貸し出しは一週間までなの。 中学じゃ確か三日間だったかな」
「えっ、それなら延滞料が馬鹿にならないじゃないですか!」
「さすがにお金までは取らないわよ。 あなたって面白いのね」
「いやあ、それほどでも」
初対面であるにも関わらず会話が弾んでいるように見える。 もしかしたら変わり者同士、馬が合うのかもしれない。
でもまあ、お陰で広太が勝手に話を進めてくれる。 考えに集中できるのでありがたい。
軽く広太を褒めた先輩は、次に制服の懐から長方形の紙を取り出す。
「これ、貸し出し表なんだけどね。 ここに書かれてる本が返ってきてないのよ」
「え? 貸し出し表にわざわざタイトルを書いてるんですか」
「そう! そこが怪しくないかしら?」
二人が会話をしている間、俺は貸し出し表を手に取り、例の借りられっぱなしの本のタイトルを確認する。
『・有るべき者
・花の切り絵
・アルタイルの奇跡
・心が晴れ
・女神が素晴らしいのでここで生活します
・犯罪は霧の中:後編』
ふむ。 確かに本のタイトルだけでは関連無さそうだ。
「セン、そんなに険しく見つめてどうしたんだい」
広太に指摘されて思わず顔を上げた俺はきっと、ぽかんとした表情で二人の顔を見たに違いない。
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