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是非ともその理由を聞きたい。 腕組みをやめて、顔を広太に向ける。
「分かりやすいように紙に書きながら話すね」とメモ用紙を一枚破り、耳に差していたシャーペンで仮説を書いていく。
「まず、男ないし女、もしくは男女混合のグループ。 名付けて図書チームがいるんだ!」
「そのまんまだな」
水を差して話の腰を折った俺を広太はじっと見つめて、軽く咳払いする。
「とにかく、そのグループは本を愛していた。 新刊が出ると皆で買いに行き、古い書物は顔を合わせながら見るほどだ。 それほどまでに本を愛する彼らがわざわざ返却を待ってから本を借りに行くと思えるかい?」
恐らく最後の一文が広太の言いたい事だろう。 前半は即興で考えた作り話に間違いない。
今度は俺が肩をすくめて背もたれに上体を預けると、椅子はキイと音を鳴らした。
「つまりお前はこう言いたいのか。 そのグループで各々が読みたい本を決めて、読み終わったら次の者に交換する方式で読んでいたと」
「そうとも! 理解が早くて助かる」
いや、誰もまだ理解に戸惑っている事はない。
広太の仮説を何も考えず、普通に話を聞くだけなら何もおかしな点は見つけられないかもしれない。 ただ、考えを深めるとおかしな点が出てくる。
俺はそこを突いた。
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