謎その二。 借りられっぱなしの本

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「しかし、だ。 六冊を一週間で回しながら読むのは不可能じゃないか? どの高校もいまでは週五日が基本だ。 例え一冊を一日で読めたとしても、必ず土曜日に重なってくる」 「そのグループは速読術を携えているんだよ」 残念だが、図書グループだかなんだかに属するメンバーにそんな能力があろうと、ある矛盾が生ずる。 こいつは先輩の話をちゃんと聞いていたはずだろう? 冗談を言っているのか? 軽くため息ついて、 「お前の仮説は成り立たんよ。 仮に速読術を持っていたら二ヶ月も返さないなんておかしいだろ。 考えてみろ、本好きなそのグループが借りた本を読み終えたいがために本を返却せず、延滞し続けたらどうなると思う」 「......さあ?」 意見を主張することは悪いことではない。 だが、自分の意見には自信と責任を持っていただきたい。 その反応だと真剣に考えているのかいないのかが分からない。 俺は投げやりな解答をした広太に言ってやった。 「延滞し続ければ、図書委員から疎まれて本が借りられなくなるじゃないか」 これでは本末転倒だ。 よって、広太の仮説は成り立たない。 納得がいかないのか、更に仮説を出してきた。 「あ、じゃあ春休み用の本を借りたとか」 「二月の中旬からか? それは早すぎる」 「んー......そうだなあ」     
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