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時刻はもうすぐ正午となる。 教室に残っているのは俺と小学生からの同級生、大谷広太だ。
すっかりがらんとした教室。
四方の壁には祝辞のコメントが並び、今は消されてしまったが、朝にはお祝いのメッセージが彩り鮮やかに黒板に書かれていた。
広太は俺の前、何某さんの席を借りて座り何かを楽しそうに待っているように頬杖をついている。
春の暖かな日差しに包まれて俺は立ち上がった。 その行動に広太が口を開く。
「お、その人の目星はついたのかい?」
「まあな」
学校机の上に置いていた紙を手に取り、軽くため息をつきながら頭を掻く。
まとめていた結論は歩きながらでも話そうか。
「それで誰なんだい? 僕の大親友、海野千助君に果たし状を送ったのは」
「果たし状ってな......。 これはただの勧誘紙だ」
「でも、入学初日からとは大胆だね」
「もともとこの差出人は大胆な人なんだよ」
「ふうん」とだけ答える広太に、俺は自分のまとめた推理を話す。
この勧誘事件(広太が勝手に名付けたもの)は、数時間前に起きたのだったーー。
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