自信に満ちた声

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確かにそうだ。 例えば警察なら、生徒に聞き込みをしてそのとき犯行が不可能だった人物を潰していって該当の生徒を見つけ出すだろう。 しかし先輩は一般生徒だ。 加えて九百名もいる生徒の中から、たった一人を当てるためだけにいちいち聞き込みをして回る暇なんて無い。 「じゃあXは単独で決まりですね」 広太がメモに単独と書いて丸で囲む。 としたのは良いものの。 「......でも、Xは借りた本を一週間では読みきれないよなあ」 「それこそ速読術がいるな」 「やっぱり本を読むことが目的じゃなかったのかしら」 いまの流れだとそう考えるのが妥当だろう。 Xは本を読む目的で本を借りてはいない。 そして、わざわざ貸し出し表に借りた本の名前を書いている妙な丁寧さ......。 「もう。 せっかく気になってた推理小説の後編が出たのに! 全然読めなくて困るわあ」 先輩は小さな机に長い髪を畝らせ、堂々と突っ伏し何度も落胆のため息をついていた。 そんな様子には呆れた声が漏れる。 「本なら買えばいいじゃないですか」 その提案に篭った声が返ってくる。 「最初はそう思ったわよ。 でも、買ったと同時に返ってきたら勿体無いでしょ。 こうなったら返ってくるまで粘るわ!」 ああ。 粘り強い人だ。 悪く言い換えると頑固だ。
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