入れられた勧誘紙

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広学(こうがく)高校はこの山端(やまはな)市の中でも特に普通と言われている高校だ。 生徒総数は九百名。 各学年三百名で十クラスの、『普通』と呼ばれる高校の中でも規模のでかい高校だ。 広く学ぶをモットーにし、学ぶというのは勉強だけでなく人間関係や社会を三年間を通じて学べるようにと名付けられたそう。 創立は三十年と若く、そのお陰か学校案内のパンフレットを読んだ限り設備に特に不自由な点は見受けられない。 だからといって年数を重ねた校舎が悪いとは思わないが。 俺は全国の受験者が味わう大変さと同等に勉強を行い、この高校に入学を果たした。 もちろん大勢の生徒の中には中学からの同級生もいるわけで、ゼロから友達作りを行わなければならない、ということは無い。 指示された教室に足を踏み入れると、明るく真っ先に声を掛けてくる者がいた。 「や、同じクラスだね」 先ほどまで楽しそうに会話していた輪から離れ、俺に向かって来たのは広太だった。 短く切った黒髪に軽く垂れた目。 おっとりしてそうな顔とは真逆に、意外と行動的なやつだ。 こいつを一言で表すなら暇人だろうか。 中学では「自分の趣味のためには惜しまない」と部活に入らず、人よりも真っ先に家路に着いていた。 ......と思っている。 もしかしたら高校でも帰宅部に所属するのかもしれない。
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