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廊下で確認した自分の席に向かうと広太もついてきた。 おっと、真横の席か。
「おはよ。 今日から新しい生活が始まるね」
「そうだな。 始まる」
「もっと明るくいこうよ。 今日の天気のようにさ!」
お前が明るすぎるだけだ。
背負っていた鞄を学校机の横にかけ、一息。 どうも緊張感に縛られている気がする。
入学式が始まる前にしっかり環境に慣れておこうと、身の丈に少し合わない椅子の背にもたれたときソレは視界に入った。
机の奥が暗くて分かり辛いが、なにやら折り畳まれた紙が入っていたのだ。
まさか入学初日にラブレターなんて物はあり得ないわけで、気になって紙をすっと抜き中身を確認する。
広太も横から覗き込むようにしてその紙を見る。 まさか開けた瞬間に爆発しないだろうなと勝手に身構えたが、それは無駄な考えだった。
内容はこうだ。
『新入生の君! この広学高校に入学を果たしたのであらば、是非とも我が[推理研究会]に所属してくれないだろうか? 了承したならば本日の放課後、特別棟一階。 多目的室迄』
一緒に校内図も入っていた。 これを見て、来いというわけか。
「めんどくさい奴がいたもんだな」
「セン宛に入部案内かい? 入試のときに目立つ事でもしたのかな」
入学の日は特に目立つことはしていない。
したとしても、定規を忘れて図形の問題は消しゴムを定規替わりにしたまでだ。
そんなこと生徒が知るわけない。 本当に入試の珍行が案内の理由なら差出人は先生だが、まああり得んだろうな。
......待てよ。 気になることがある。
「広太、この紙はお前には無いのか」
「うん。 無いよ」
どこか変かな? と言わんばかりに首を傾げる広太。
これはなんだか嫌な予感がする。
そのとき教室の扉ががらりと開き、
「間も無く入学式を行います。 皆さん廊下に並んでください」
若い男性職員にそう促され、俺と広太を含めたクラスメイトが立ち上がる。
「さ、いまは学校行事に身を任せようじゃないか」
「そうだな」
とりあえずこの厄介ごとは後回しにしよう。
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