差出人の正体

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入学式も無事終わり出迎えムードから一転して静かになった校内を、俺たちは校内図を頼りに多目的室へ向かっている。 「教えてくれないかな。 その差出人が誰かって」 静かな階段はよく声が響く。俺たち以外に誰も人はいないだろうが、やはりここを下りてからにしよう。 一年生の教室はなぜか四階にある。 そこから学年が上がるにつれて反比例に教室の階が低くなるのだ。 校内図を見る限りその多目的室に向かうには、二階まで降りて連絡通路を渡り、特別棟に移るとそこから更に一階降りて目的地である多目的室へ向かうことになる。 この一年間だけは少し面倒くさい通路だ。 という間に連絡通路に出た。 ここなら声も響きにくいし、他者に聞かれることはないだろう。 もっとも、聞かれてまずいような内容ではないが。 過不足なく説明できるよう歩む速度を落として、 「まず、どうして俺の机にだけこの紙が入っていたのかだ」 校内図の後ろに隠していた勧誘紙を抜いて広太に渡す。 それを見ながら広太はこう言った。 「テキトーに入れただけじゃないかな。 きっとこの推理研究会からの差出人は、入部してくれるなら誰でも良かったんだよ」     
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