自信に満ちた声

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自信に満ちた声

先輩は机の上に置いた両手を拳になるようきゅっと握った。 「た、多分......だけどね」 「名前を知ってるんですか?」 俺がそう訊くと、先輩は「違う違う」と胸の前で両手を振った。 「私が知ってるのは男子生徒がその本を借りて行ったってだけよ」 「......では、どうして貸し出し表に本のタイトルが書かれたのを不思議に思ったのですか」 先輩がその男子生徒が本を借りるところを見たなら、貸し出し表にタイトルを書く行為を不思議に思うことは無いだろう。 俺だってカウンターに誰もいなければ来るまで待つか、表にタイトルと名前を書くくらいはする。 まあ、今は借りた主の名前は無かったが。 「まさか返ってこないなんて思ってもなかったからよ。 返さない本をわざわざ表に書くなんてって」 「そう、ですか」 となれば、X、単独による犯行ーー。 「じゃあその生徒に話を聞けば良いのでは?」 広太の言うことは至極もっともな意見だ。 ただ、先輩は軽くかぶりを振った。 「でもね? 顔は見えなかったのよ。 特殊な髪型をしてるわけでもなかったし。 さすがにこんな大勢の生徒の中から一人だけ見つけ出すのは不可能でしょ?」     
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