第三章 神降し

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[ブッフッ!!] 意識の無いまま横たわっていた吉法師が突然口から血を溢れさす。 [シャ、シャン!!] 空間の空気が替わったのと鈴の音がズレたのは同時だっただろうか。 葛の顔が強張った。 政秀の手印が解ける。 『えっ?』 眼を閉じていた政秀が咄嗟に顔をあげ眼を開ける。 空間のものは何も替わっていない。しかし先程までとはまったくの別の空間になってしまったかのようだ。 覆っていた神気はすっかり別の不吉なものに替わってしまっている。 吉法師の身体が小刻みに震えだす。 『若!?』 声にして良いか解らず発することはできない。 変わらずに続けられる楸の祝詞と二人の舞。 徐々に吉法師の震えは大きくなる。 血が辺りに飛び散る。 蓬の頬に跳んだ。 踊る二人に苦悶(くもん)(そう)が浮かぶ。 [シャン!!] それでも鈴の音を合わせる。 吉法師の身体が大きく跳ねた。 それと同時に楸の祝詞が終わる。 二人の舞子は吉法師に向けて手をつき頭を床につけて伏せている。
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