第一章 うつけの戯《たわむ》れ

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爺やの腰を抑えてうずくまる姿に、供の者たちが慌てて集まる。 その様子を振り返りながら、女の身体はお構いなしに引きずられていく。 「無礼な!!離しなさい!!」 視線の先に農家の納屋だろうか、粗末な小屋が。 何かを決心したかのような表情の若武者は、一言も発せずに小屋を目指す。 懐の小太刀は取り出した途端に打ち落された。 [ガッ!ズザザザザ…] 絶望的な音を立てて小屋の戸が開かれる。 荒い戸塀(とべい)の所々から光が漏れ込むものの薄暗い小屋だ。 藁しべがまばらに散る固い土床に引き倒すように(ほう)られる。 「っ!!……おやめください……」 引きずられてきた腕も、打ち付けられた腰も痛む。涙が浮かぶ。 これまでの命令口調から懇願。 「……お助けください……」 すがる思いで見上げる男の大きな身体がなんの躊躇(ちゅうちょ)もなく迫りくる。 身じろぎ後ずさるも(わずか)かなものだ。髪飾りがチリリと鳴る。 男の強い精気のこもる眼差し。 ぐいと突き出される腕。抗うことは許されない。 着物の胸元が一気に開かれる。 「きゃっ」 真っ白な肌に柔らかなふくらみ。 男の左の口角が吊り上がる。
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