第三章 神降し

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「オン バサラ アラタンノウ オンタラク ソワカ」 与願印(よがんいん)を結び虚空蔵菩薩真言(こくうぞうぼさつしんごん)。 唱える繁丸の背後に虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)顕象(けんしょう)が浮かぶ。 構わず更に一歩踏み出す吉法師。 脚が注連縄に触れると縄が炎を上げて焼け落ちる。 結界に閉じ込められていた禍々しい空気が噴き出す。 [ゴトッ] 気にあてられた蓬が倒れ込む。 「姉上!!」 葛が慌てて駆け寄る。 楸は(しゅ)を唱え始める。神解(かみと)きの(しゅ)。 吉法師が一歩。 繁丸の刀が吉法師の胸央(きょうおう)を突く。 しかし吉法師の手刀が刀を折る。 吉法師は余裕の笑み。 繁丸は折れた刀の刃半分で切り付けるも吉法師の(こぶし)が持ち手を殴り刀を落とす。 繁丸の拳が吉法師の頬を殴りつける。 頬を起点に身体がねじれふっ跳ぶ。 それでも笑みを浮かべて起き上がる吉法師。 へこんだ頬骨がパキパキと音を立てて再生していく。 追撃を浴びせようと繰り出される繁丸の腕を抱えると引き抜くように投げ捨てる。 篝火台(かがりびだい)を巻き込んで柱に叩きつけられる。 ちぎれかけた腕を再生しながら繁丸が起き上がる。 そこからは壮絶な肉弾戦となる。 繁丸の流の攻撃を受ける吉法師。 受けながらも剛の拳で繁丸の(ながれ)を圧しかえす。 拳の一撃一撃に空気が震える。
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