第三章 神降し

9/11
前へ
/73ページ
次へ
徐々に開く差があった。 繁丸の舞うように流麗な武闘は、うねりと(よど)みを生じ、吉法師へ届かなくなった。 (ほむら)の宿らぬ裸の拳を繰り出すも、吉法師は避ける素振りもなく正面から剛の拳で打ち砕く。 「やめて!」 うずくまったまま見上げる蓬が泣きながら声を上げる。 しかしどちらの耳にも届かない。 葛も涙にくれる。 [ドシャ!!] 吉法師の拳が繁丸の顔面を捉える。 繁丸の目玉が血と黄色い液体と共に跳びだす。 糸の切れた操り人形のように墜ちる繁丸。 吉法師が繁丸の頭を握りつけ、邪悪な笑みを浮かべて見下ろす。 「おぱぁぁああ!!」 鯉が水面で大きく息を吸うように口を開ける繁丸。 吉法師が掴んだ頭を投げ捨てる。その先には必死に神解きの呪を唱え続ける汗だくの楸。 血まみれの繁丸の身体がぶつかり、二人投げ出される。 「繁丸!!」 身体に押しつぶされた楸が繁丸を(かか)える。 繁丸の残眼(ざんがん)が楸の顔を見つける。 口角が吊り上がる。 (よだれ)が糸を引く。 鼻腔から蒸気のように息が噴き出す。 繁丸が楸の巫女装束を(むし)り取る。 楸の豊かな乳房が(たゆ)み汗が弾ける。 「繁…!!」 驚き呼びかけるも乱暴な唇が言葉を塞ぐ。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加