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私が下男の時、執事長であった父が亡くなった。母は私を産むと同時に亡くなったようで、既にいなかった。
私は13才で孤児になったものの住み込んでいたお屋敷にて、そのまま置いて頂けることになった。
私が父と同じように18才で執事になった時、お屋敷に嫡男がお生まれになった。
既に3人お子さまがいらっしゃったが、全員女性だったので、待望の男児だった。
そのお子さまは、ガブリエルと名付けられた。
ガブリエルは聖書に記された天使の名前だ。
とても高貴な名前だったが、ガブリエル様は残念なことに器量がよくなかった。
お父上に似たのか、そばかすだらけの肌に少し低い鼻を持っていた。母上に似たのは、綺麗な金髪に宝石のような碧い瞳であった。
しかし、屋敷中の皆が、否、村中の皆が、ガブリエル様を愛していた。
なぜなら、器量は良くなかったが、心根が優しく、とても愛嬌のある可愛らしい方だったからだ。
執事である私にもよくなついて下さり、時間のある時はよく一緒にいた。
ガブリエル様が14の頃、私を見つめる彼の瞳が変わったことに気付いた。
宝石のように透明な瞳の中に、小さな炎のような熱が垣間見えた。
その炎が見える度、私の心はかきむしられた。何故ならば、私の中にもガブリエル様に向けた炎がーーガブリエル様の炎よりも熱く、強く、どす黒く燃えていたからだ。
ガブリエル様のそれは、周囲にもその熱を撒き散らしそうであった。
そうして、私が内心ひやひやしていると、とうとう痺れを切らしたガブリエル様が私に触れてきた。
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