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そうして、私達は時折互いの炎を確認するように瞳を絡めるものの何も口にせず、何にも表さず、ただ自らの心の中で欲望を飼い続けた。
私が執事になったのと同じ18の時、近隣の皇女がガブリエル様の妻になった。私は祝福しつつも彼が私のベッドで乱れる妄想をしながら、夜毎、売春宿で彼に似た男を抱いた。
甘い虚無に、私の心は張り裂けそうだったが、彼への忠誠心と、ひどい執着心が私の均衡を保っていた。
彼の傍にいられることが、辛く、そして、唯一の救いだった。
だが、ガブリエル様が30になった時、私がもうすぐ50になる年に、彼は病に倒れた。
村一番の医者や近隣の評判のよい医者にも見せたが、今の医療では治せないと言われた。
不治の病だった。
日に日にガブリエル様の容態は、目に見えて悪くなっていった。
持って1年。早くて2ヶ月の命だと医者は言った。
私は運命とはなんて残酷なのだと思った。
私はてっきり、ガブリエル様に看取られながらこの世を去れると思っていたのに。
私の愛する人は、皆、私を置いていこうとするのだ。
2ヶ月が過ぎ、3ヶ月が過ぎ、食が細くなり、動けなくなり、ベッドに寝たきりになったのが6ヶ月目、時折意識が混濁し始めたのが8ヶ月目であった。
屋敷中の皆が、彼が1年を待たずに天へ召されるのだとうすうす感じていた。
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