1.出会いと再会

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「葉月ちゃん、本日二回目。あと一回で授業は終了でーす」 「え!あ!ごめんなさい!!」 葉月の現実逃避癖は様々なところで現れる。 それは勉強中でも全く関係は無く。 そこで、優也は葉月が三回現実逃避したら、その日の授業を強制終了するというルールを作った。 おかげで、かなりのプレッシャーを感じ、葉月が強制終了を食らったのは、この二年間で十回はいかずに済んだ。 「じゃあ、時間も時間だし、あとはこの一問終わったら、今日は終了ってコトで」 「……コレ……?」 優也が指さしたのは、そのページの最終問題。難易度を見れば、最高レベルのものだ。 「そうだね。あと十五分でどう?」 「ええっ!?無理無理!!」 今やっているのは、葉月の天敵、数学なのだ。 最初の問題でかなりつまづいているのに、それは無いだろう。 少々恨みがましそうに葉月が優也を見上げると、優也はにこやかに笑い返した。 「……もう……!できなくても文句言わないでよ!?」 やさぐれつつも、葉月はシャープペンを握り、丸々十五分間、問題と戦った。 ――結果としては、完全敗北ではあったが。 「ごめんね、葉月ちゃん。正直無理だとは思ったんだけどね」 「じゃあ、何で……」 「んー、最近ちょっと身が入っていない感じだったから、ちょっとした嫌がらせ?」 「……優也さん……!」 実際、優也の言う通りなのだが、それでもこの仕打ちは無いだろう。 葉月は責めるように優也を見るが、当の本人はどこか楽しそうだ。 それを不思議に思い、尋ねる。 「……優也さん、何かあるの……?」 その質問に、優也はにこやかにうなづいた。 「まあね。もうすぐウチに、友達が来るんだよ」 「え?」 「あ、気にしないで。ていうか、葉月ちゃんも一緒にどう?」 「は?」 突然の展開に、葉月の頭は停止する。 「いや、あのっ……あたし帰るから……」 言いかけたところで、部屋のチャイムが二回、短い間隔で鳴り響いた。 固まる葉月と対照的に、優也は足取りも軽く、玄関へ向かう。 「ゆ……優也さん!帰る!帰るからっ!!」 慌てて葉月は荷物を抱えると、それに続いた。 そしてドアを開けた優也の脇をすり抜けて、外に出ようとした瞬間、葉月は何かにぶつかった。 「きゃ……」 「うわっ!」
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