1.出会いと再会

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反射的につむった目をそっと開ければ、そこにはジャケットらしきもの。 そして、ぶつかった感触は明らかに男性のもので――……。 視線を上に移動させると、葉月は硬直した。 全身を、何かが一瞬で巡っていく。 ――……あれ……? ……このひと……。 …………どこかで……。 頭の隅をかすめていった記憶は、しかし、葉月本人には自覚されないままに消えていく。 そんな葉月を見た相手は、何か言おうとしていた風ではあったが、後ろからやってきた彼の友人たちによって遮られた。 「信(しん)!こんなトコで突っ立ってるなよ!」 「ほら!荷物持って!」 信、と呼ばれた彼は、少しバツが悪そうに葉月に笑いかけて、友人の要望どおり進路をあけて荷物を持った。 葉月は、慌てて脇によけ、そんな彼の様子をうかがった。 だが、頭の中は少々パニック状態だ。 さっきのあれは……一体、何だったんだろう……。 彼の後ろ姿を見ながら、葉月は考え込む。 身長はそんなに高くはない。優也よりも十センチくらいは低いだろう。 中肉中背、紺色の薄手のジャッケトに薄い青のジーンズ、けれど今も学生服を着せても似合いそうな、幼さの残る顔。 そう思うのは、多分、目が割と大きめだからかもしれない。 何にせよ優也の友達という事は、二十歳は超えているはずだ。 確かに、どこかで会った事があるとは思う。 だが、思い出せない。 葉月の記憶力はどこかに問題があるのか、時折、このような状態が起きる。 過去、会った記憶はあるのに、詳しい事が思い出せない。 何か頭の中に、もやがかかったような、そんな状態。 それは人物に限った事ではなく、何があったのかもだ。 小学校の時に行ったはずの遠足が思い出せない。 どこへ行ったか、何に乗って行ったか。 「葉月ちゃん!」 「え」 声のする方を見ると、葉月のいる玄関の方へ、優也が慌ててやって来た。 そして、葉月の顔を心配気にのぞきこむ。 「大丈夫?」 「え、あ、うん」 「――……本当に?気分悪くない?」 「大丈夫だよ。ありがと」 葉月が困ったように笑い返すと、優也はようやく安心したようだ。 「ごめんね、驚かせて。騒がしいヤツばかりなんだよ」 その言葉が聞こえたのか、部屋に上がり込んだメンバーから文句が上がる。 「何だよー!こんなに大人しくしてるのによー!」 「どこがだ!」
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