1.出会いと再会

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振り返り、笑顔で返す優也を葉月は少々珍しいものを見るように見上げる。 自分といる時には、こんな風に笑う優也はお目にかかった事は無いのだ。 ――……本当に、友達なんだ……。 葉月の知る優也は、昔から、頭が良い分、他人との距離があったような気がするのだ。 だが、今の優也は、そんなイメージを覆す程に、楽し気に笑っている。 「葉月ちゃん、もう、ついでだから紹介しておくよ」 そう言って、優也は葉月の腕を取ると、再び部屋にUターンさせる。 「え、あの、優也さん?」 「お前ら、この娘が従妹の橋本葉月ちゃん。高校二年、ちなみに俺たちの後輩だからな」 その言葉に、葉月の方が目を丸くする。 という事は、ここにいるメンバー全員が葉月の通う高校の卒業生なのか。 「うそー!すごい偶然ねー!あ、あたし、渡部美沙(わたなべ みさ)。ヴォーカルとキーボードやってんの。よろしくねー!」 かなりのテンションで葉月の前にやってきて自己紹介をしている長身の美人。黒髪のショートボブカット、白のリブニットと紺色のジーンズはそのスタイルの良さが一目で分かる組み合わせで、葉月は一瞬たじろいだ。 だが、その言葉に少々引っかかるものがあり、優也を見上げる。 それに気づき、優也は葉月が尋ねる前にメンバーに釘をさす。 「ああ、お前ら、葉月ちゃんは何にも知らないんだからな。最初から自己紹介しろ」 「りょーかーい!」 全員がにこやかに返事をし、美沙、と自己紹介した彼女の後ろから顔を出した男性。 美沙は、身長が百五十五センチの葉月よりも頭ひとつ高いが、その彼は美沙よりも更に頭ひとつ高い。 髪の色は葉月に近い淡い栗色で少し長めの髪。黒縁眼鏡で、カーキ色のジャケットと黒のパンツなのに、印象は派手に感じる。 「初めましてー!ここにいる俺たち全員で、来週メジャーデビューする"ファーストスター"ってバンドやってんだ。で、俺はギターの高坂秀之(こうさか ひでゆき)。よろしくね、葉月ちゃん!」 立て板に水というのはこういう事なのだろうと実感するくらい流暢に話すその彼に、少々たじろぎながらも、葉月は笑顔を作って挨拶を返した。 「よ……よろしくお願いします……」 だが、直後に気がつく。 「……バンド……?」 しかも、来週メジャーデビュー……?
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