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……え……っと……"久しぶり"……?
久しぶり、ってコトは……確か、少なくとも一回以上会った事のある人達の挨拶……だよね……?
……ってコトは、やっぱり、あたしはこの人に会っている……?
その結果が導き出されるまで、信は根気よく葉月を待った。
それに気がつき、葉月は慌てて謝る。
「すっ……すみませんっ……!あたし……」
すると、信は一瞬だけ悲しそうに葉月を見ると、すぐに笑顔を見せた。
「良いよ、会ったって言ったってほんの少しの間だし。葉月ちゃん、まだ小学生だったから。改めて、藤堂信(とうどう しん)です。ヴォーカル担当……よろしく」
「……本当に……すみません……」
申し訳なさすぎて、葉月はうつむいた。
「あ、いや、仕方ないよ。それにオレすぐに引っ越したから、そんなに会ってた訳じゃないしさ。気にしないで」
信のフォローも、葉月の耳には届かない。
……そんなに会ってなくても、忘れる訳が無いのに……。
そう思った自分が不思議で、葉月は答えを知りたくて、自分の中に入り込む。
それに気がついた優也が、軽く葉月の肩をたたいた。
「葉月ちゃん、どうする?帰る?」
「え、あ。……うん」
完全に現実逃避が始まる前に止めてくれたおかげで、葉月の意識は現実世界に戻ってきた。
優也に、この症状がどこまで気づかれているかは分からないが、おそらく予想はできているのだろう。
時々、葉月の肩などをたたいて、気づかせてくれるのがありがたい。
「あ、じゃあ、送って行くよ」
「え?」
てっきり優也が送るのかと思ったら、信がそう言い出し、葉月は戸惑う。
「ああ、頼むわ。俺はコイツらがペース上げないように見張ってるから」
「了解」
葉月本人に確認するでもなく、優也と信は、二人で完結した。
「あ……あの……」
「夕方って言っても、最近いろいろ危ないしさ」
「いえ、でも、家なんてすぐそばですから……」
会った事があるとはいえ、ほぼ初対面の人間と二人きりなど、気まずいだろうに。
すると、優也が部屋の中を移動しながら、葉月に告げる。
「心配しないで良いから。 そいつ、ウチのメンバーの中で一番無害だからね」
「え、いえ、そういう事じゃなくて……」
「早いトコ帰らないと、ココ、酔っ払いだらけになるよ」
「え」
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