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「待ってくださいよぉ!」
今日何度目か分からない叫び声が聞こえてきた。
その声に従って止まることはない。波の音が耳に届く。
夏って感じだ。
海へと吸い込まれていく砂。
足に当たる波は冷たくて気持ちいい。
立ち止まり空を見上げる。
そこには巨大なもくもくした入道雲があった。
「夏ですね」
「ああ……夏だな」
ただ暑いだけだと思っていた。
けれども、こうやって景色を眺めていると夏が好きになる。
最後に見ることができてよかった。
死に対しての恐怖心が薄らいでいる自分がいる。
怖くないのか……
信じていないのか……
受け入れているのか……
分からない。
ただ一つ言えることは、向日葵から告げられたことで積極的に楽しもうとしていた。
現にこうして下まで降りてきた。
この選択に後悔はない。
少しは感謝してもいいかもしれないと思った。
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