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就職活動を終え、大学生活も残り僅か。
就職先もこれがやりたいから、こうなりたいからというものはない。
思えば大学も同じような理由だった。
最後ぐらい自分のやりたいことをやろう。
だから青春18切符を片手に一人旅に出た。
お盆が明けて、日差しが厳しい夏の日に……
先程から目の前に座っている少女。
始発の駅から一時間ぐらいずっと。
見た目からは高校生だろう。
肩まで届く髪に少し焼けた肌。
夏休みだから平日の昼間でもおかしくはない。
なぜか気になってしまう。
少女はずっと車窓からの景色を楽しんでいるようだった。
つられて窓の外を眺める。
海、崖、山、そしてトンネル。
非日常だった。
けれども、この辺りの人にとっては日常の一部だと思うと不思議な感覚だ。
「……あなたは五日後に死にます……」
少女は突然、口を開いた。
電車の音に消されてしまいそうだった。
近くの席には誰もいない。
少女の大きな目が俺を捉えている。
独り言でもなさそうだ。
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