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「急に何だって顔をしてますね。そうですね……簡単に言うと私、死神なんです。消えゆくあなたの命をいただきに来ました」
聞こうとしたことを当てられ驚いたが、死神の方がインパクトが大きかった。
どう返答したらいいだろうか。少し悩む。
「中二病か?」
「ち、違いますよ。もぉ、ちょっと見ていてください!」
少女は立ち上がり、こんにちは、と叫んだ。
他の乗客には何も聞こえていないみたいだ。
「信じてくれましたか?」
少女は振り返り、満面の笑みでこちら見た。
事前に打ち合わせをしていたとは思えない。
後から乗ってきた人もいた。
それにこんなことに付き合おうって言う人も少ない気がする。
ということは本当に……
急に冷や汗が背中を伝う。
そして、胃が締め付けられた。
「すぐとは言いませんがちゃんと信じてくださいね」
「一ついいか?」
「はい。何でしょう」
「死神って禍々しい鎌に黒いマントじゃないのか?」
「それ現代日本に刀を持った侍がいるっていうのと同じですよ。死神にも時代に合わせているんです!」
むすっとした顔で少女が言った。
これだから人間はと付け加える。
いや、見たことないからしょうがないだろ。
よく死ぬ前に何か見えるようになる、見えない何かと話していると聞く。
もしかしたら、こんな普通の人と変わらない存在のことかもしれない。
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