1

8/16
前へ
/37ページ
次へ
斜面は壁のように反り立っていた。 気合いで登っている人もいれば、横から迂回する人もいる。 迷ったが正面から急斜面のルートを選択した。 登り始めると意外にいけるかも。 一歩、また一歩と順調に足が出る。 だが、中盤に差し掛かった辺りで徐々にスピードが落ち始めた。 足にくる。 頂上は遠い。 考えてしまうと悪循環に陥る。 「お兄さん、ファイトですよ」 隣では向日葵が涼しげな顔をしている。 そもそも目線がおかしい。 俺は前傾姿勢なのに対し、垂直に近い姿勢。 明らかに重力を無視しているように見える。 「あっ、私死神なんで。重力は関係ないんですよ。ほらっ」 ジャンプしても真っ逆さまに落ちることはなかった。 その場に浮いている。 物理法則に反した光景に言葉を失った。 向日葵は再び斜面に足をつくとこっちを見て笑った。 ずるい。 転がり落ちてしまえばいいと思った。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加