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斜面は壁のように反り立っていた。
気合いで登っている人もいれば、横から迂回する人もいる。
迷ったが正面から急斜面のルートを選択した。
登り始めると意外にいけるかも。
一歩、また一歩と順調に足が出る。
だが、中盤に差し掛かった辺りで徐々にスピードが落ち始めた。
足にくる。
頂上は遠い。
考えてしまうと悪循環に陥る。
「お兄さん、ファイトですよ」
隣では向日葵が涼しげな顔をしている。
そもそも目線がおかしい。
俺は前傾姿勢なのに対し、垂直に近い姿勢。
明らかに重力を無視しているように見える。
「あっ、私死神なんで。重力は関係ないんですよ。ほらっ」
ジャンプしても真っ逆さまに落ちることはなかった。
その場に浮いている。
物理法則に反した光景に言葉を失った。
向日葵は再び斜面に足をつくとこっちを見て笑った。
ずるい。
転がり落ちてしまえばいいと思った。
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