第1章:マオ【因果応報】

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良かった、助かった……。 安心したのも束の間。 足音の主はわたしの目の前で立ち止まると、しゃがみ込んでクスクスと笑い始めた。 何なの、コイツ。 早く救急車呼んでよ……。 足元を見て、革靴を履いたスーツ姿の男だってことはわかった。 ウザっ、酔っ払ってんの? ゆっくりと視線だけを顔の方へ移した瞬間、わたしは両目を大きく見開いた。 どうして、アンタが!? そこに居たのは、死んだはずの柿谷だった。 「久しぶりだねぇ、マオちゃーん」 柿谷はそう言うと赤黒い歯肉を見せて嬉しそうに笑い、わたしの右手を掴んだ。 イヤッ! 離して! そう叫びたいのに、声が出ない。
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