第1章:マオ【因果応報】

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流れるように自分の口元へ運んだわたしの右手の親指を、柿谷は躊躇うことなく喰い千切った。 イヤァァァァッ! あまりの激痛と恐怖に、頭の中で悲鳴がこだまする。 そんなことはお構いなしに柿谷はグチャグチャと音を立てながら、躊躇うことなく人差し指と中指も噛み砕いていった。 どうして? 何でわたしがこんな目に……? 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない! 抗いようのない死への恐怖に涙が止まらない。 「あはは、マオちゃんって、スッピンはブサイクなんだねぇ。すっかり騙されたよ……。やっぱり女の子の化粧って詐欺だよね? さあ、右手の次は左手だよぉ。それから、左右の足……。そして、子宮に……心臓。安心して、きみのカラダは全部食べてあげるから」 そう言って柿谷は、血塗れになった舌でわたしの右頬を舐めた。 お願い! 騙した分のお金も払うし、もう一回SEXもしてあげるから! 助けて! とっくに手放したはずの意識の中、わたしは終わることなく延々と繰り返される残虐行為と、自分の血の臭いだけを感じていた……。
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