63人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはようございます」
「おはよう……」
署内で藤原と顔を合わせたヨウコは、昨日ヤスヒトに会ったことを話すか否か迷っていた。
以前の彼女ならば間違いなく彼と情報を共有し、冷静な対応をしただろう。
しかし、この時ヨウコの胸の中には、藤原の刑事としての素質に対する焦りと、嫉妬心が渦巻いていた。
まるで、仮面を外され、自分の奥底に眠っていた感情を引き出された気分だ。
―――― 後輩に負けてなんかいられない。影野康仁の秘密は、私が1人で暴いてみせる……。
「先輩、顔色があまり良くないみたいですけど、大丈夫ですか?」
「うん。今日は日勤だし、大丈夫。少し寝不足なだけだから……」
時折心配そうな視線を投げかける藤原を横目に、仕事を終えたヨウコは午後5時30分に署を出て、ヤスヒトの待つバーへ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!