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雨でびしょ濡れになった自分のカラダは急速に冷えていき、寒さと恐怖から歯がガチガチと音を立ている。
早く、着いてよ!
ようやくマンションの8階に到着したエレベーターを降りるなり、悴(かじか)む右手で鍵を開けた。
「どうしたの? そんなにずぶ濡れになって」
ドアの開いた音に反応して、リビングから出てきた母親が驚きの声を上げた。
「何でもない……」
「何でもないって、こんな時間に帰ってくるなんておかしいじゃない。トキコ……あんたまさか、また仕事辞めて来たんじゃないでしょうね!?」
聞きなれた母親の怒鳴り声さえ、今の私には苛立つ元凶。
荒い呼吸音と落ち着かない鼓動に、冷静さは失われていく。
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